Tokyo College of Music Composition Course

東京音楽大学作曲芸術音楽コース

この作曲芸術音楽コースでは、もちろんクラシック音楽の流れを基礎とした歴史に確たる裏付けされた様々な作曲法を学べます。
ソロからオーケストラ等の大規模な編成や、和声学・対位法といった古典的技法からミニマル音楽・スペクトル音楽といった現代の音楽の技法、ピアノやヴァイオリンといった一般的な楽器から尺八やの楽器、そしてバロック、古典派、ロマン派、近現代といったクラシック音楽をメインにポップスやジャズ、映画音楽、民族音楽、コンピュータ音楽など多岐にわたって学生の求める分野の教育を受けることができます。
しかしそれは、他のコースでも他の大学でも多かれ少なかれ学べることでしょう。

このコースの最も大切にしていること、それは「創造性」と「多様性」です。この二つの概念こそがこのコースが最も重要視し、他のあらゆるコース、大学より最も抜きん出ている特徴的なところだと自負しているものであり、そして正にこれこそがその作曲家、作品が後世まで語り継がれるかどうかの重要なポイントなのです。

いま皆さんは、全ての作曲家は「作曲」しているのだから創造性があり、それぞれ「違う作曲家」「違う作品」なのだから多様性もある、そんなことは当然だと思われたでしょう。
しかし歴史から学び、あらゆる知識を吸収すればするほど、後世に残る高いレベルでの「創造性」と「多様性」を習得するのはなんと難しいことかと思い知るでしょう。
旧約聖書に”There is nothing new under the sun”(訳:太陽の下に新しきものなし)という言葉があります。人々は似たようなものを食べ、似たようなものを着て、同じ言語を喋り、どこかで聴いたような曲を書きます。それが普通です。
しかし真の創造とは〈他にはない何か〉を持っているものです。それがあるから彼らの作品は親しまれ、演奏され続けるのです。同じジャンルに属している著名な作品でも、知らない曲でも聴けばどの作曲家のものかすぐ分かるでしょう。その多様性こそが創造の個性の源なのです。
昨今、教育水準の向上とデジタル技術の向上により誰もが・・・例え習わなかったとしても・・・作曲をできる時代になりました。しかし誰もが作れるものに価値はあるのでしょうか?
歴史の中に消えていった幾千、幾万もの作曲家たち作品たちと、今なお輝きを失うことなく多くの人に愛され親しまれ、そして敬われる作品では何が違うのか私たちと一緒に考えてみませんか。研究と考察、これは知識を超越して新しい創造性に富んだ作品を生み出すための一歩だと言えます。

このコース、そして教員陣は本コースの学生たち卒業生たちの作品が、近い将来においても遠い未来においても高い芸術的価値を評価され、多くの人に親しまれる・・・そんな学生を育てたいと思っています。
そのために本コースではまず入学試験の段階で和声学と与えられたテーマによる時間内での作曲を課題としています。これは学生の基礎的作曲力を確認するためです。
入学後はさっそく皆さんの創造力を磨く段階に入ります。4年という時間は決して長くありません。
本コースには学年毎に、作曲のさらに進んだ基礎技能を学ぶための「作曲理論」という授業があります。ここではクラシックから現代音楽までの基本的な楽器学、書法(エクリチュール)、作曲技術が学べます。
ですが本コースの1番の特徴は何といってもレッスン担当教員を学生自ら年毎に決められることでしょう。これは創造性と多様性を重視する本コースならではのシステムです。
これにより皆さんは自分がその年度もっとも学びたい分野、もっとも皆さんの創造力・多様性に必要な分野の教員に指導を請うことができます。3年生以上は2人以上の教員につけるのでその創造性はさらに向上することでしょう。教員たちは皆さんが後世に残る優れた作曲家になるためのあらゆるアドバイス、知識を教授します。

入学後に皆さんに課せられる課題は概ね年間で1〜2作品の提出です。これは作曲家としては少ないと言えますが、自らの創造性を探している途中の者にとっては多いともいえるでしょう。
4年次にはオーケストラ作品が課題となっていますが、優秀な2作品は大学オーケストラにより世界初演されるチャンスがあります。詳しくはカリキュラムのページをご覧ください。
本コースでも他のコース同様学生の自主性を求めています。教員は学生のためにありとあらゆる指導を考慮しますが、最後の殻を破るのは本人の努力のみによって達成されます。
学生による自主的な作品発表会は頻繁に行われ、自主性に基づいた門下発表会、学年発表会はたくさん開催され、時には学外で演奏会を開催することもあります。今では作曲芸術音楽コースの正式な行事となったコンクール「東京音楽大学学長賞選考演奏会」も初めは学生の自主的な旗揚げから始まりました。
また、他大学との交換交流事業、海外の大学への交換交流事業、そして第一線で活躍する作曲家や演奏家を招いて特別講座が開かれ指導を請うことができ、自主性のある学生にとってはまたとない機会にたくさん恵まれることになるでしょう。

本コースの普段の学生生活は非常に穏やかで伸び々々としています。
作曲家は普通は一人で活動するものですが、本学の伸び々々としたスタイルにより作曲の学生たちは授業などで顔をあわせると、今自分が作っている曲や興味を持っている音楽などについて和やかに意見交換をしている風景が見られます。
普段一人の者たちが自分とは全く違う個性と触れ合う機会があるということ、これも自らのオリジナルな創造性、多様性を磨き上げる一つの原動力となっています。
教員からの刺激と友人からの刺激、そしてゆったりと研究・考察をして知識を深め、自らの創作活動に打ち込める・・・それが作曲芸術音楽コースというものです。
そんなこのコースは、私たちそして他の科からも親しみをこめて「作芸」(さくげー)と呼ばれています。皆さんも作芸で私たち教員や友人たちと一緒に後世に残る創造の一歩を踏み出してみませんか。